【シリーズ新型コロナ後遺症】診察現場から 集中力・認知力が低下のブレインフォグ 立ち上がれないほどの疲労 「家族さえも…」 つらい周囲の無理解U【第三回】

広島市立広島市民病院松村俊二総合診療科部長 広島市立広島市民病院松村俊二総合診療科部長
 新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)。

 本人が何らかの症状を感じ、医療機関で診察を受けたとしても、原因が不明で、明確な診断がくだせないケースもあるとのことです。

 中には、家族からも理解されず、人知れず苦しみを抱える後遺症患者もいます。

 シリーズ3回目となる今回も、コロナ後遺症の診察にあたる広島市立広島市民病院の松村俊二総合診療科部長に、現場について語っていただきました。

不定愁訴(ふていしゅうそ)と受け取られてしまう

Q今問題になっている後遺症の症状はありますか

Aコロナ後遺症は非常に多彩です。どことなくしんどいとか、気分が沈む、息が切れる、集中力が続かない、頭が重い、動悸がするなどの訴えは、本人はつらくても主観的な症状であり、検査をしても客観的所見に乏しく、原因となる病気が見つからない事が多く見られます。このような状態を医学的には「不定愁訴(ふていしゅうそ)」と言い、周囲には理解されにくく、医療者からも「扱いにくい患者さん」と受け取られてしまうことがあります。こういった患者さんは、職場や学校では「すぐ休む」と言われてしまったり、疎外されてしまったりして、精神的なダメージを受けることになります。

 例えば、ブレイン・フォグ(脳の霧)という症状があります。脳に霧がかかったように感じる、頭がもやもやするといった症状で、集中力や認知力が低下します。そうなると計算が出来なくなったり、人との約束を忘れてしまったり、本や新聞も読めなくなるなど仕事や勉学に支障が出ます。そうなると仕事や学校を続けることが難しくなり、退職や退学を迫られることにもつながってしまいます。

 そんな患者さんの苦しみを理解するため、患者さんの話を聞くのは時間がかかりますし、検査で異常が無いからといって気のせいで済ませることはできません。精神的に参っているからといって、精神科だけで対応する状態でもありません。もちろん、不安やうつ状態が強い場合には、精神科の先生と一緒に診察にあたることもあります。コロナ後遺症患者さんの立場を理解しサポートするために、他の診療科やソーシャルワーカー、地域のかかりつけ医、行政ともなるべく連絡を取り合って治療に当たっています。

自律神経障害の可能性?

Q全身倦怠感などの症状は何が原因ですが

Aコロナ後遺症では血液検査やCT、MRIなどの検査で異常が明らかになることはまれです。しかし、最近の研究では、コロナで亡くなった方を実際に解剖すると延髄など脳の中にもウイルスが入り込んでいることが分かっています。さらに、交通事故で延髄などを損傷した方の中にもコロナ後遺症と同じような症状が見られることから、後遺症が脳の機能障害によって引き起こされているのではないかと考えられるようになっています。

 この機能障害は、自律神経障害(失調症)とも呼ばれ、自律神経のバランスが乱れて倦怠感や動悸、息切れ・呼吸困難感、ふらつき・めまい、不眠などを来します。

後遺症を訴える人に寄り添える世の中に

Q一番言いたいことは

A 後遺症は、働き盛りの年代に多く見られます。特に、療養期間が終わったあと、すぐ仕事に戻らなければならない40〜50歳代の方に多いようです。無理をして、その時は何とか働けても、仕事後に立ち上がれないような疲労感が残り慢性疲労症候群のようになることがあります。そうならないように、自分の動ける範囲を把握して、それに合わせて生活リズムを整えること(ペーシングと言います)が重要です。

 見た目は健康な人と変わらなくても、自分自身が壊れないように、しんどい時は休むことが大切です。そのために、必要なときには医師に相談して、職場や学校に診断書を提出するという方法もあります。そして、少し楽になって来たとしても無理をせず、治療を続け様子を見ながら少しずつ働く時間を延ばすなどしなければなりません。

 後遺症を家族にさえ理解されず、苦しんだ末に当院にたどり着いた患者さんは、たいてい話をうかがうとホッとして泣かれます。やっと言えた、やっと理解してもらえたと。新型コロナは、もはやいつ誰が感染してもおかしくない病気です。そして、もしかすると自分が後遺症になってしまうかも知れません。皆が自分の事としてとらえ、後遺症に悩んでいる人を理解し、思いやる気持ちを持ちませんか。苦しみに寄り添える世の中であってほしいと願っています。

まとめ

 コロナ後遺症の診察にあたる、松村医師の現場からの声でした。

 厚生労働省によると、罹患後症状(後遺症)の代表例として、疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下などが挙げられています。
 
 しかし、未だ不明な点も多くあります。

 大切なのは、後遺症とみられる症状で長期にわたり苦しんでいる方がいると言う現実を周囲が正しく理解することではないでしょうか。

 「感染症・予防接種ナビ」では、医師との研究活動の一環として、コロナ後遺症の経験談を募集しています。

 また、コロナ後遺症について詳しく知りたい方は、広島県医師会が2022年9月に発行した「救急小冊子 知っておきたい新型コロナウイルス感染症の後遺症」をご覧下さい。


取材:広島市立広島市民病院 松村俊二総合診療科部長
参照:救急小冊子 知っておきたい新型コロナウイルス感染症の後遺症(広島県医師会)
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